表現について

 何かを人に伝えたいときや自分の心が何かを表したいと求めるとき、私たちは表現するためのいろいろな手段を選ぶことができます。自分の感じ方や意見などを広く知ってもらいたいときに、自分ならどんな表現手段を使おうとするでしょうか。人に親切にされたとき、感謝の気持ちをどのように表すでしょうか。折々にふれる自然の美しさや異文化とのふれあいによって生じた感動を自分の記憶にとどめるために、どうしようとするでしょうか。色やかたち、音やリズム、ことばとその響きや意味、表情や仕草、身体の動きなど、少し考えただけでも表現のありかたのいくつかが挙げられます。そして、そのそれぞれに、特長があり、必要に応じて、私たちはそれらの表現を使い分けています。これが、美術や音楽、文芸や演劇など、さまざまな芸術表現の活動に結びついていることを考えるならば、やはり芸術というのは、何かのかたちで人が生きてゆくためには欠かせないものであるのかもしれません。それは生きてゆくことにとても近しいものであることにも気づかれるでしょう。


徳島県立近代美術館ニュース No.34 July 2000
2000年6月
徳島県立近代美術館