[暮らしの中に] ステンシル

 紙に一つの三角形を描いてみるとしましょう。つんつく尖った三角でも、おむすびのようなふんわりした三角でも、何でもかまいません。自分の好きな三角を描くのです。

 次に、その三角をカッターナイフできれいに切り取ってみましょう。線に沿って、丁寧に三角を切り取ると、自分の好きな三角が二つできたことに気付くでしょう。切り取った三角と、切り取られた部分の三角は同じ形をしているからです。

 草色の紙の上に、三角を切り取られた紙を置き、重ねた上からカナリヤのような黄色の絵の具を塗ることにしましょう。きれいに塗ることができたら、筆を置き、重ねた紙をそっと取り除きます。

すると、草原にカナリヤ色のテントが現れます。切り取られた穴から、カナリヤ色の絵の具が草色の紙の上に塗られたからです。

 では、もう一つの切り取った三角を、緑の紙の上に置いてみましょう。きちんと動かないようにして、その上から全体に青い絵の具を塗るとしましょう。きれいに塗り終えたら、そっと切り取った三角を取り除きます。そうすると、青い海に緑がいっぱいの三角の島が現れます。三角の置かれた部分には、青い絵の具が塗られなかったからです。

 このような方法も版画の技法の一つで、ステンシルといいます。私たちの周りには、ステンシルの技法を用いたものが数多くあります。


徳島県立近代美術館ニュース No.18 Jul 1996
1996年6月
徳島県立近代美術館