美術館の催し -教育担当からレポート- 2004

催しへようこそ!


 「展示解説を始めまーす、よかったらご参加下さい…」。日曜日、観覧中のお客様に声をかけて回ります。「待ってました」と振り向く人、「ふーん」と作品鑑賞に戻る人、すでにロビーで集まっておられる人。思い思いの美術館での時間を少しお借りして、スタッフがトークを始めます。おおむね45分から60分。時にはマイクを使うほど盛況の日もあります。

 展示室でのトークや、3階の講座室でのテーマを絞ったお話、アトリエで創作を体験するものなど、美術館では色々なタイプの催しを準備しています。心がけているのは、お客様と美術をつなぐ「橋渡し」となることです。知りたい、もっと楽しみたい、何か情報が欲しい−美術に親しむ中で何かを求める気持ちが芽ばえた時、少しでも役に立てたらと願っています。

1年を振り返って


 平成16年度は、展覧会ごとの担当者のアイデアが光る、印象的な催しがいくつもありました。7月に新収蔵品のお披露目を兼ねて、植松奎二さんによる「パフォーマンス&トーク」。気さくな語り口と、観客へ自分を開いていくお人柄に、親しい空間と熱い拍手が生まれました。「徳島のためのパフォーマンス」なる新作も誕生。11月には絵本作家いわむらかずおさんが来館し、子どもたち一人一人と話しながらサインされた姿が心に残ります。年が明けて1月には、シュルレアリスム研究の第一人者、巖谷國士さんが講演。マン・レイの映画を映しながら弁士をされたのには驚きました。大好きな美術のことを、熱く熱く語りたい、私たちの仕事の原点を思い出させて下さったように感じました。

 いわむらかずおさんの展示にちなんで、夏から秋にかけて3回やった絵本づくり「森からつくる1ページ」ではたくさんの子どもたち、ご家族の方と出会うことができました。日々の遊び、ご家庭での時間が、アトリエの中にむくむく広がっていくのを、本当に楽しくお世話させて頂きました。2月にこれも新収蔵品のお披露目として、日本画家・森山知己さんの「画材の秘密&トーク」。森学芸員とのダブルトーク、胡粉や膠の素材体験と盛りだくさんの内容に、初心者から経験者まで満足された様子です。ほかにも、各担当者が持ち味をいかして色々な催しを企画しました。

 新しい試みも始めました。こども鑑賞クラブ「君こそアートの名探偵」と題して、土曜日の小学生をお迎えする催しを展覧会ごとに計画。クイズの指令カードや、ミニ探偵手帳、ゲーム仕立ての作品探しなどをしながら、子どもたちの声を聞いていきます。美術館での楽しい経験が思い出になってくれたら、と取り組んでいます。美術と出会う子どもたちの視線は本当にまっすぐで、驚くような感想を次々と語ってくれます。私たちスタッフ自身が鍛えられ、自分たちの美術の見方を学び直していく場でもあります。よく笑いよく泣いた 1年だったなと振り返ります。子どもを送り出して下さる保護者の方の暖かいご支援に恥じないよう、活動をつないでいきたいと思っています。


徳島県立近代美術館ニュース No.53 Apr.2005
2005年3月
徳島県立近代美術館 竹内利夫