[報告] 美術館と学校教育との連携について(下)

前回に引き続いて当館の学校教育との連携事業をご紹介します。

3.学校の授業などへの支援


 出前授業と美術館での鑑賞を結びつけた取り組み以外にも、学校に出かけていろいろな授業を行っています。15年度は、中学校において、作品の見方や美術史についてスライドを用いてわかりやすくお話ししたり、小学校一年生の授業で、サルバドール・ダリのパズルを使って、いっしょに楽しんだりしました。いずれも、当館の所蔵作品をまじえて教材化したもので、美術館のコレクションについて知ってもらういい機会にもなりました。パズルは、遊びの感覚を取り入れながら、ダリやシュルレアリスム(超現実主義)の手法について楽しく学べるようにしたもので、子どもたちには大好評でした。
 また、総合的な学習の時間で、作品の鑑賞だけでなく、収蔵庫、空調機械室、トラックヤードなど美術館の裏方見学をして、美術館の仕事を学ぶ授業も受け入れています。高校生のインターンシップ、中学生の職場体験学習では、展示作業の見学などの他、掛け軸を扱う実習にも挑戦してもらっています。

4.展覧会ごとのワークシート


 最近来館された方は、お気づきになっているのではないでしょうか。昨年の5月から、展覧会ごとにワークシートをつくり、受付で小学生(高学年)、中学生に配っている他、一般の方も手にとることができるようにしています。館内で印刷した簡単なものなのですが、作品に親しむきっかけづくりができるよう工夫しています。このワークシートは、遠足での利用はもちろん、事前に学校に送付することで見学の参考資料としても活用していただいています。

5.先生方との協力、鑑賞教育推進プロジェクト


 いうまでもありませんが、学校と美術館を結びつける活動は、先生方の協力がなくては一歩も前に進みません。ここでご紹介した授業や解説なども、生徒や学校のようすを教えていただき、意見をうかがいながら実現してきたものばかりです。
 また、その他にも、学校と美術館の協力のあり方を考えたり、授業で使いやすい鑑賞教材の開発を行ったりする研究会(鑑賞教育推進プロジェクト)を開いています。小中学校の先生、大学の研究者の方と美術館職員がメンバーとなり、2002年7月にスタートして以来すでに14回の会合をもちました。この間、子どもたちにアンケートをとりながら、所蔵作品の「鑑賞シート」2種類をつくっています。現在、授業案などの解説も加えて、先生方にお渡しできるよう準備を重ねているところです。鑑賞教育にご興味のある先生は、どうかご連絡ください。

 子どもたちがやわらかい感性で作品を楽しむ姿を見ると、多くの子どもたちに美術館での鑑賞を体験させてあげたいと改めて思います。印刷物では味わえない作品の魅力に直に触れることができるのです。美術館の職員は、絵画や彫刻、デザインなど、それぞれの専門分野で貯えた知識や経験を活かしながら、できるだけ多くの子どもたちが美術とのいい出会いができるよう頑張っています。先生方!一度ぜひ美術館にお問い合わせください。

●受賞のお知らせ


リサイクルをテーマとした総合学習の一環として、美術館の出前授業を取り入れてくださった仁木博子先生の論文、「教師の意識を変え学校を社会に開く『総合的な学習の時間』の実践−地域や外部機関との連携を生かして−」が、平成15年度第47回教育論文・実践記録・創案教具選賞会(徳島市教育研究所)で市長賞を受賞されました。『入選作品収録第35集』(平成16年3月)に論文が収録されています。


徳島県立近代美術館ニュース No.50 July 2004
2004年6月
徳島県立近代美術館 森芳功