[報告] 美術館と学校教育との連携について(上)

 みなさんは、学校の授業で美術館を使ったことや、学芸員の出前授業を体験したことはありますか?
 最近、徳島でも、「総合的学習の時間」や図工、美術の授業などで、美術館を活用する学校が少しずつ増えています。遠足で美術館を訪れるときも、学芸員と先生方が、いっしょにプログラムをつくり、楽しい鑑賞ができるよう工夫する試みも始まっています。かつて、海外の美術館サービスとしてよく例に出された、作品の前に座る子どもたちへの授業を、当館で見かけられた方もいるのではないでしょうか。ここでは、そんな美術館と学校を結ぶための活動を少しばかりご紹介したいと思います。

1.グループ鑑賞、いろいろな団体鑑賞


 学校の美術館利用の一例として、授業や遠足で訪れた生徒をいくつかのグループに分け、講師といっしょに鑑賞する、「グループ鑑賞」を挙げておきましょう。子どもたちに問いかけ、その答えを見つけることが作品の観察と結びつくような、対話を重視した鑑賞のあり方です。たとえば、徳島市内の小学校(3年生)の生徒たちが「フランス近代絵画展」(2003年11-12月)を訪れたとき、シニャックの点描を遠くから作品に近づくなかで見つけ、発見の喜びを伝えたいという表情を見せてくれました。そんな反応を、きっちり評価し、拾いあげていくことが、次の鑑賞につながっていくのだと考えています。
 講師は、学芸員など美術館側スタッフの他、引率の先生方に活躍していただくこともあります。学校側と美術館の職員が、互いに得意な分野を活かすことで、いい鑑賞の時間がつくれるよう模索しています。
 もちろん、遠足などで、学年ごと、あるいは学校全体で行う解説も今まで通り行っています。そんな解説を含め、学校の条件にあったお手伝いのあり方を、見つけていきたいと思っています。

2.出前授業と美術館での鑑賞を結びつける


 昨秋、県南部の小学校から、彫刻をテーマにした団体鑑賞の希望がありました。
担当の先生のお話をうかがい相談するなかで、学芸員がまず学校にでかけて彫刻の見方を説明し、美術館では、荻原守衛など所蔵作品展の彫刻を中心に鑑賞することを決めました。事前学習で、ロダンの考える人のポーズをまねる体験を行うなど、「わくわく度」を高めてからの鑑賞です。展示室では、5人の学芸員が持ち場を決めて対応。生徒は10人ほどのグループに別れ、先生などに引率されて、解説を聞いたり、学芸員と話したりする形をとりました。
 昨年度は、徳島市の小学校で、リサイクルをテーマとした総合学習の一環として、出前授業と鑑賞を結びつける試みも行っています。
担当の先生が、当館の特別展「本と美術」(2002年7-8月)を見て、「ひらめいた」提案でした。まだまだ実践例は多くありませんが、出前授業と美術館での鑑賞を結びつけた授業は、いろんな可能性を秘めているように思われます。[つづく]

*当館の「学校教育支援事業」については、徳島県立近代美術館ホームページも参考にして下さい。


徳島県立近代美術館ニュース No.49 Apr.2004
2004年3月
徳島県立近代美術館 森芳功