2007年08月23日

「くもならべ」第1弾−城ノ内高校編

 熱い。水槽の底のように静かな中庭が、ふつふつと沸いたあらゆる色の大気と光の粒で燃えるようです。夏色の台風、冬空や星宙の大嵐、小さな木陰の物語もあれば、夢のシャボン玉が、澄んだ音を奏でるジュエリーに見る見る変化していく。どれも1枚1枚の絵の中で起こり、そして友だちのそれと重なり合い引き立て合い起こっていることがらです。
 夢を目覚めて見るように鮮烈なこの絵画を作ったのは、城ノ内高校・中学の美術部のみなさん。その素晴らしく自由で責任感のあるエネルギーです。驚いたといったら失礼でしょうか、とにかく起動力がすごい。朝からの3時間でずんずん「くもならべ」のテーマをわがものとしていきます。それは気持ちのいい仕事ぶりでした。誰も立ちすくむことのない、自分の時間がここにあるという信頼の場を作っている玉田先生すごいと思います。
 そして生徒さんたちのリズムと呼吸しながら、的確に加速度のギアをあんばいしていく岩野さんの指揮はいつもながら感心します。お昼休みも使っての日々の作品講評も力一杯。

 直観的に選んだお気に入りの雲型に、思い思いの雲を描けと、実に雲をつかむような話。どの人も自分の描き方を新しく発明しないことには1日でこの絵を完成するのは無理です。しかも描いて終わりではなく、他者と一緒に空間の中に構成していかねばなりません。一人一人の出来ばえは、刻一刻とふくらんでいく空間の中で試されていく。自分がどれくらいできたかは自分が一番よく分かるのです。でもそこには成功や苦労こそあれ、優劣や正解不正解などで片付くものではない、確実な生の体験があります。掛け替えのないその納得を、一人ぼっちではなく仲間と確かめ合える幸せ。良いプログラム。まっすぐな表現者たちです。
 学校の先生方や一般の皆さんは、これを一部の珍しい「図工好きの子」の楽しみと見るでしょうか。違うと思うのです。ここには、何事であれ丸腰で体験し直していこうと挑む人間の喜びがあります。本当に尊い人生の時間。
 そして彼女らは実は決して丸腰ではない。毎日の制作活動の中で探り取って、勝ち取ってきた「自分の絵」がある。それを本当に軽やかに(本人たちは絶対しんどかったはず)、アレンジしたり壊したり、仲間と刺激し合う中からもう一度生まれてくるもの。
 中学から高校の忙しくて苦しい季節をふんばって、ものを生み出す生きざまの渦中にいる、自分たちのすごさをずっと忘れないでいて欲しいな。そんな憧れを抱いて戻ってきたことです。ホントみんなかっこよかった。

名称 2007.08「くもならべ」−城ノ内高校編−
<第22回国民文化祭・とくしま2007美術展 WS 第5弾> 徳島・徳島県立城ノ内高等学校
日時 平成19年8月23日[木] 9:00-16:00
場所 徳島県立城ノ内高等学校・中学校(徳島市北田宮1丁目9番30号)
参加者 24人(高等学校+中学校)
協力 玉田修平(徳島県立城ノ内高等学校)
サポートスタッフ 黄瀬 剛、池上将暢、二木奈緒、中村友香
イワノブログ: 8月23日-1 8月23日-2
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