2009年11月19日

ピカソdeうまそ!食べある紀

スタッフによる食べある紀を順次、紹介させていただきます。シェフの手の中にあるドラ・マール、展示室に掛かっているドラ・マール、自分なりの印象の中のドラ・マール、色んなことを考えながら食すとそれは楽しい、発見に満ちたアート体験。こんなの初めてです。すばらしいシェフたちのお仕事に感謝します。みなさんの体験はどんなでしたか?
six
ピカソランチ (欧風料理シェ熊谷さん)
 要予約のドキドキランチ体験。赤と緑が目に鮮やかなメインのお皿は、秋野菜いっぱいの堂々たる味覚巡りの旅を満喫できます。野趣あふれる香ばしさと刺激的なチーズの風味が大層気に入ってしまいました。そう、ドラ・マールは可愛いだけじゃない大人の女性。パリの町を生き、アートを生きた、一人の実在の人物の強烈な存在感をふと思ってしまいました。絵画に想いを馳せながらの食事ってこんなに面白い! まさにうまそ企画の醍醐味ですネ。
cinq
ミルフィーユ・オ・ショコラ (CHRISTINE(クリスティーヌ)さん)
 ストライプ、丸いかたちのくり返し、ピンクとブルーの筆づかい。ほほがほころんでしまう楽しさがあります。「なるほどあの絵がこうなるのかあ…」。目で楽しんだ後、面白い食感と風味があくまで穏やかに、ふわりと。この調和こそ当館のドラのやさしいムードを実に誠実に映し出しているではありませんか。すごいなあ。
quatre
ピカソバーガー TANTO(タント)さん)
 三食目。大の鶏好きでして、特設オープンカフェで阿波オドリバーガーが今日で食い納めと思うと何とも残念(11月8日、記)。たべごたえ=そこに向けてバンズのおいしさと具のこんもりがいつも楽しませてくれます。極上の親子丼にも似た「渾然一体」がTANTOさんの美学なんだなと。それを肌で舌で感じるのが「ピカソdeうまそ!」企画です。アートの可能性も人生も誰にも負けないほど楽しんだピカソの哲学を、思いながら食すとまた一層おいしいのです。ピカソの大きな声を(聞いたことないけど)感じるひととき。
trois
ロンブル・ドゥ・ドラ・マール (お・菓・子・畑 Petit Art(プチアール)さん)
 泣く女ドラの、ふとおだやかな瞬間を思うほど愛しくなるのが、当館の「ドラ・マールの肖像」の魅力。柔らかい白一色の背景に紫のトーンがさえる、「モーブ色(紫葵)のえりまき」とあだ名された逸品のシンプルさと甘さ。このお菓子で、口いっぱいに共感することができます。うーん、こういう攻撃があるのかあ。忘れてならないのはこのビスキュイの大きなサイズ。これ食べちゃ悪いなあとしばし眺めてしまうそのシルエットこそ、シェフの脳裏に刻まれたドラの横顔だなんて。ビスケット、あなどれません!
deux
ピカソdeピカタ (レストラン コックドールかげやまさん)
 わたくし無知でテキトーにとじた肉がピカタと思ってました。ちゃいます。ぶワッと広がるチーズな風味の中から、オーブンとデミソースと二重の香ばしさが順々に、お肉を喜ばせます。手をかけたお仕事がちゃんと伝わってきて、いろんな色彩が頭に浮かんでくる。おそるべし「洋食」。可愛い息子ピカソの着ぐるみにあれこれ世話焼く、あったかーいスペインの母に包まれる思いでお肉と一体化したわたくしです。シェフ、照れないで自慢してください。ピカソの故郷カタルーニャを僕は楽しめましたよ。
un
ベル・ドーラ (キャフェ・ド・パウゼェさん)

 家族で朝パウゼェ。さりげなく元の作品の造形性をアレンジする目ぢからに、まず釘付けです。そして、大人向けの薫り高いムースのはらはらするようなハーモニーは、それはドラマチック。並みはずれて強いものを持ちながら、自らのあやうさに胸を痛めた、ドラのダイナミックな心理をあまりにもイメージさせます、すごい、ため息...。彼女と出会ってしまった驚きが、いまも頭から離れません。素敵な体験でした。シェフありがとう!