美術館に展示している絵の額縁は、どうやって選ぶのですか?

 絵や版画が、新しく美術館の収蔵品となった時、額縁が付いていないことがあります。たとえば作家のご遺族からお譲りいただいたような場合は、アトリエに残っていたままの状態で美術館に入ってくるので、美術館が額縁を用意することになります。この場合は、作品の雰囲気や作品の保全などを考えて、最も適当と思われる額縁を美術館が選びます。

 しかし大抵の場合は、すでに何らかの額縁が付いています。美術館では、新しい作品が入ってくると、作品だけでなく、額縁も丹念に調査します。その結果、額縁を修理したり、新しいものに交換することがあります。

 ただし、作家自身が選んだ額縁が付いていた場合は、原則として交換することはありません。傷みがある場合は修理をし、額縁の構造が作品の保全のために良くないと判断した場合は、新たにアクリル板を入れたり、表から見える部分をそのまま生かして、裏側だけを改造することがあります。できるだけオリジナルの印象を残すよう努めるのです。額縁も、作家の意向が反映された「文化財」の一部だと考えているからです。

 作家自身が選んだものではないものの、長く時間が経過して、作品がつくられた時代を如実に反映していると判断した場合も同様です。

 もっとも、額縁にも時代による流行りすたりがあります。そのため、今の私たちの感覚からすると、作品に似合っていないと感じることがあるのも事実です。あまりに豪華な額縁で、作品の印象を損なっていると感じたり、逆にもう少し重厚であればと思うことがあるのです。お客様が違和感を感じられるのは、このような場合ではないでしょうか。

 ちなみに、作家の意向と関係なく、第三者が取り付けた額縁は、思い切って交換することがあります。ただしこの時も、古い額縁は参考資料として大切に保管しています。


徳島県立近代美術館ニュース No.39 Oct.2001
2001年9月
徳島県立近代美術館 江川佳秀