チャレンジとくしま芸術祭2024 ザ・ファイナル 審査員講評 チャレンジとくしま芸術祭2024 ザ・ファイナル 審査員講評 チャレンジとくしま芸術祭2024 ザ・ファイナル 審査員講評

審査員講評

2024年2月4日(日曜日)15:00より、フリースペースチャレンジとくしま芸術祭2023 ザ・ファイナル 表彰式(非公開)を行いました。
各部門審査員の講評をごらんいただけます。

審査員

※下記の各審査員名をクリックまたはタップすると、講評をご覧いただけます。


展示部門

≫展示部門受賞者紹介

パフォーマンス部門

≫パフォーマンス部門受賞者紹介

島尾 竜介

徳島県立近代美術館 館長

展示部門の講評を申し上げます。

yoyoru(グランプリ)
一点ごとの作品の密度が高く、100点の作品を一堂に展示したチャレンジ精神と仕事量に圧倒された。作品数は多いが全体的なまとまりがあり、絵本のような物語性を感じさせる。見ていて楽しく、その世界に引き込まれた。見る人に作品タイトルを考えさせるなど、観覧者と共に作り上げようとする工夫も光る。これからの展開を大いに期待したい。

山田百合愛(準グランプリ)
擬人化された動物たちという舞台設定が面白く、一見楽しそうに見えるが、そこに社会的なメッセージ性が込められている。作品のクオリティも高く、夜空を見上げるように、高めの位置に展示した点にも工夫が見られる。自分が表現したい世界を描き切ろうという意気込みが伝わってきた。さらなる成長を目指して、制作を継続していくことを期待したい。

笠原あろは(チャレンジ奨励賞)
中学生の自分自身とカラスを重ね、作品をつくることで自分をみつめている。模索しながら、造形を通じて生き物の生命観をしっかり表現しようとしていることが伝わってくる。また、テーブルの色の反射がカラスの羽の色にも効果を与えている。自分の描き方を大切にして、自分に見えている世界を、作品を通じてこれからももっと見せてもらいたい。

SHOTA ISAWA(チャレンジ奨励賞)
白と黒のコントラストが深刻な社会問題を明確に表現しており、ハートに向かう赤い糸は、その問題の方向性を示している。赤い糸の張り具合は、社会問題をめぐる緊張感を思わせ、壁面を広く使った展示構成も印象的である。シンプルな構成でメッセージがよく伝わってくる。これからも表現の幅をさらに拡げていくことを期待したい。

ぴらぴた(チャレンジ奨励賞)
壁面に展示した漫画であるが、見る者にしっかりと読ませる力があり、悩みが伝わってきた。ペンギンのキャラクターも魅力的で、作者の人間性を感じさせる。作品名の「うつむいて歩こう」に救われる人や、共感し勇気や希望をもらう人もいるだろう。チャレンジすることだけがいいのではなく、自分を肯定し、自分らしくいることの大切さを教えてくれた。

ひkaル(MIP賞)
触れてはいけない内面の生々しく直接的な感情に触れてしまったようなインパクトと魅力を感じる。技法にもモチーフにも、既製の枠を感じさせない独学の良さがある。表現したいことを自分で探し、自分のフィルターを通して描いた世界は魅力的である。迷いながらもチャレンジを楽しんでいるように感じられる。今後もぜひ描き続けてもらいたい。

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内藤 隆

鳴門教育大学教授

フリースペースチャレンジとくしま芸術祭は今回で一区切りです。最後ということで作品の応募状況を若干心配しましたが、全く杞憂でした。展示部門にご応募をいただいた皆様、力のこもった作品を展示してくださり、有難うございます。

まずは受賞者の皆様、おめでとうございます。
グランプリのyoyoruさん。深い青をベースとした1点1点密度のある小型の絵画をそれぞれ額縁で飾った作品のシリーズを、合計100点揃えて展示したもので、とても壮観でした。質・量ともに最高の展示です。またテーブルに観客に呼びかけるアプローチをセッティングされた点も非常に良かったと思います。審査会場の中でも一際輝いて見える作品であり、他の審査員の方々の評価も高く、文句なしの第1位でした。これだけの量を制作するのにどの位の時間をかけられたかとも思うのですが、一つ一つは小型の作品なのでコツコツ続けられる将来性をも感じるものでした。是非今後も続けて頂けたらと思います。

準グランプリの山田百合愛さん。サーカスを舞台に、人間たちを追い払う動物たちを描いた横長の作品でした。山田さんの絵のタッチは何故かとても懐かしく、自分が子供の頃に活躍していた灘本唯人や宇野亞喜良といったイラストレーターの大御所を少し思い出させるものでした。時代のスタイルは輪廻を繰り返しますので、自分のスタイルを維持発展させて今後もいよいよ山田さんらしい面白い作品を作り続けていただけると嬉しいです。

チャレンジ奨励賞のぴらぴたさん。絵を描ける人の中でも、漫画を描いて読ませる力というのは、ほんの一握りの人しか持っていないと思います。絵柄もしっかり特徴があって、コマ割りも無理なく、その世界に入ることができます。壁に貼られた4コマを順に追い、ぴらぴたさんの「これまで」を興味深く読み「ああ、うつむいて歩いても良いのだ」と深く納得しました。一歩下がっても大丈夫なんだと教えられて、勇気が出ます。いい漫画です。また続きも是非読みたいと思いました。

SHOTA ISAWAさん。貧困から生み出される虐待・孤独・戦争といった大きな社会問題のテーマを、モノトーンのシルエットでシンボリックな絵柄に収めています。赤い線(糸)で破綻を示しているようだけれど、作品全体の上部に赤いハートを配置することにより「救い」を期待させるのです。しかし3つの絵柄が非常に具体的なだけに、この「期待」が自分たちの勘違いかもしれないという不安も残させる、とても良い仕掛けになっていると感じました。

笠原あろはさんは動物が本当に好きなのですね。特にカラスが好きということで、作品それぞれはそれほど大きくないものですが、深く観察されたカラスの様子が作品になっています。色々な表情を見せるカラスはこの辺りに多くいるハシボソカラスでしょうか。笠原さんがその多様な表情をよく見ているのが伝わってきます。

MIP賞のひkaるさん。タイトルや絵柄から人間の中の、生々しい部分が伝わってくる作品でした。特に人間の輪郭は良い感じに捉えられていると思います。顔をあえて省いているところも効果的です。動物の食物連鎖を表現したような作品もありましたが、こちらも生々しさをもっと強調できるのではないかと感じました。独学とのことですが今後の展開を期待します。

入賞はしていませんが、自分にとって印象深い他の作品も触れておきます。
牧内英治さんのこがし絵は年々質が高まっていて好感が持てます。今回は植物図鑑のような描き方に進化を感じました。
さんの猫のキャラクターも良かったです。以前はリアルタッチで描かれていたように覚えているのですが、今回は一定のポーズを漫画風にキャラクター化し拡大していて、個性的でした。なんだか昭和初期の漫画のタッチみたいで温かみも感じます。

 さて、一定の展示壁面が与えられ、制作形式はなんでもありというこの企画では、美術館の展示室に皆さんの表現する気持ちがストレートに運び込まれ、非常に面白いものでした。歴代の受賞者の中には、この企画形式でなければ発掘できなかった方もいたように思います。
審査する側としては、自分の頭にこびりついている美の知識・概念・偏見を一旦傍に寄せて公平に見る必要があると思うのですが、これがまた難しく毎回苦労しました。毎回が自分を見つめる良い機会でもあったように思います。
この企画は今回で一段落ではありますが、皆さんの描く・作る・表現する力を、地元徳島県のためにも、今後も是非やり通していただきたく思います。

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佐原 理

徳島大学准教授

審査員として、「チャレンジとは何か」常にその問いと向き合いながら皆さんの作品を鑑賞し、本当に多様なチャレンジがあるものだと感服しました。数年に渡り審査に携わらせていただきましたが、感嘆させられるのはやはり生涯にわたって表現しなければ自分ではいられないというようなその原動力と力強さです。
今回グランプリを受賞された「yoyoru」さんの作品も大変印象強く心に刻まれています。壁一面に表現された世界観は見るものを圧倒し、また言葉なくとも視覚的に多くの物語を読み聞かせてくれるようでした。本当に美しいものがあります。 また、「ぴらぴた」さんの作品には、チャレンジという言葉がもしかしたら、誰かの重荷になっているかもしれない、チャレンジしないという選択もまた1つの表現としてあり得るのだと気付かされます。親や友人、学校や社会、または世界が求める価値がそもそも正しいのか?自分がこの世界に生きる上で本当に正しい選択をしたんだと訴えるような作品、ロックだなぁと親しみを覚えると共に、一人じゃないぜ!っと勇気をもらいました。数多くの作品群に囲まれると、我々人類はどのような環境に置かれたとしても、目の前にあるものを使いなんらかの表現をする、その根源たる生命感に心動かされるのだと、改めて気付かされます。作品を見渡しても技巧やコンセプト、見せ方の視点等の面白さ、また人生を賭けて臨むような取り組みに目を奪われ、多様なチャレンジ、その創意工夫に本当に心躍りました。皆さんの制作は多くの方々の共感を生み生きる勇気へとつながっていったことと思います。ユダヤ人収容所では子どもたちはどんな状況においても絵を描き表現し、夕日をみてそれに感動するような人が今日まで生き延びたのだと云われています。表現すること=抑圧からの解放という側面がこのチャレンジとくしまでは大きな響を奏でていたように思います。こうした場で人々がかくも自由に表現する様をみると教育や社会が我々を規定し表現の幅を狭めてしまっていないかと考えさせられます。どうぞ、もっともっと私たちが見たこともないような表現・自分らしい伝え方に挑戦してみてください。チャレンジとくしま芸術祭に出品していただいた全ての皆様に感謝するとともに、今後の皆様の創作活動を応援したいと思います。

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丸中 登紀子

フランス語講師・翻訳通訳者

今回で最後となる本芸術祭。審査員という立場で今年も芸術を堪能させていただきました。
長年チャレンジされてきた方をはじめ、最後ということで挑まれた方など、本年も様々なアーティストによる個性溢れる作品が会場を飾っていました。
芸術とは、作品を通じて言葉にできない自分の感情を表現したり、伝えたいメッセージを表現したり、ありのままの自分をさらけ出せるツールであったり、情熱を形にするツールであり、作者と鑑賞者との間接的な対話であるということを改めて実感することができました。そこに枠はなく、作品を見ていて自由に表現できることをうらやましく思いました。
その表現方法は様々で、表現することを純粋に楽しんでいるものや、創作しながら自分らしい表現を模索しているもの、シンプルな表現で匠にメッセージを伝えるもの、緻密で膨大な作業が作り上げるもの、自分というものを受け入れたことが鑑賞者の共感を得たり、鑑賞者も自分と向き合うきっかけを与えるものであったり。それぞれが作品と向き合う姿を創造すると心を揺さぶられました。
グランプリを受賞されたyoyoruさんの作品は、一枚一枚の絵が個性を放ちつつバランス良く統一感をもたらしており圧巻で、繋がる物語を感じる世界観。絵本となって手元に届く日がくるような気がしました。そして今回は社会的な問題に触れたメッセージ性のあるものも見られ、不穏な世の中の情勢を感じるところもありました。そういったメッセージを山田百合愛さんは愉快に皮肉めいて描いており、またSHOTA ISAWAさんは白黒赤の3色でミニマイズされた表現で伝えていてとても印象的でした。
プロ・アマやテーマ、素材など問わず、純粋に芸術にチャレンジできる貴重な場を15年にわたり提供しつづけた芸術祭。出展者の方のメッセージを読むと、これをきっかけに芸術活動がより活発なものとなり、アーティスト同士の交流の場となっていたことが伝わり、今年最後となることを残念に思います。
アート作品を身近に感じることは、何気ないことのようでとても大切なこと。心を豊かにし、人に奥行きを与え、日常の何気ない選択や構築に影響を与えることだと思います。専門的な知識があれば作品の見方がより深いものとなりますが、感じるままに思うままに気軽に自由にプラスの感情やマイナスの感情を抱いたりすればいいのだと思っています。私自身は後者の見方で審査員を務めさせていただきました。毎回緊張の審査会でしたが、私なりの視点から感想を伝えさせていただき、審査員の先生方からはいろいろと勉強させていただきました。 来年からはまた何か新しい形態となってさらなる進化を遂げた芸術的な行事が開催されることを期待しています。携わられた関係者の皆様お疲れ様でした。またお会いできることを願っています。

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竹内 利夫

徳島県立近代美術館 上席学芸員

 受賞作も、おしくも受賞とはならなかった作品も含めて、前向きな集中力というのが今年最後の芸術祭会場から私が受け取った印象です。最終回だからぜひ受賞を狙って、と肩に力が入ったというよりは、むしろ悔いが残らないように精一杯やる、そんな空気です。

 それは受賞作の皆さんの堂々としたマイペースさにも表れています。yoyoruさんの無限にも感じられる星の時間にただちに吸い込まれていくような世界。SHOTA ISAWAさん、ぴらぴたさんの切々と示されるテーマとの対話に気がつけば没入している空間。昨年はただ1点の絵画で自律する場をつくってくれた笠原あろはさんや、ひkaルさんが、まるで観客を気にしないかのごとく自分のスタジオでの正直な息づかいをさらけだしてくれる場所。そして5メートルの中の壁面をこれしかない、という凝縮の格好よさで作家の思念の小宇宙として魅せてくれた山田百合愛さん。せっかく惹かれた自己表現の道はとにかくマイペースで歩くのがよいのだ、見ている側にもそんな元気を与えてくれる顔ぶれでした。

 ハっとさせられた表現はたくさんあります。萩野ひろみさんの藍染め作品はオーソドックスに布を吊り、色彩と柄を見せ、技を見せます。でもそこに見えてくるのは心、声。言葉も絵も使わず、やわらかくつよく人を揺さぶる心模様の世界を、工芸の分野で深めているってすごい。三木美雪さんの触れてよいアートも、一見スタイリッシュにパーツを組み合わせたものだけど、指先から入ってくる見知らぬ感触や動感に驚かされました。株式会社GDさんの掛軸写真は、日常の光景を拾い集めたアルバムかと思いきや、映像的な構成の巧みさや画像のタッチによるのでしょうか、当人たちが過ごした時間の彩りやうつろいに思いをはせたくなります。いつも工夫をこらしたコンセプトで人間表現の様々を見せてくれる西広生さんも今年は観る人の心境に任せるような抜け感というのでしょうか、交感を静かに待つような佇まいが優しかったです。

 好きなことを続けたい。そんな素直さは力として伝わってきます。大住順子さんの松ぼっくりの小世界や加代子&Kフレンズさんのような、とまらないおしゃべりのような楽しさ、牧内英治さん、marja/まるやさん、蜂蜜檸檬さん、日下彩子さん、りょうすけさん、SD paper craftさん、キャリアの長短なんて関係なく、勤勉さのパワーは平等だなって思います。sgmk・ショウジマキさん、益井正樹さん、Raraさん、クラゲと愉快な仲間たちさん、石田晴美さん、ゴールなどなさそうなバイタリティが頼もしいです。

 何描けばいいか自己プロデュースしてる主役感に憧れます。さん、磯中大志さん、タケダナオユキさん、石川かおりさん、villasto(イシムラ.ノブユキ)さん、ハルト&ミノルコさん、タニザキ ヒロエさん、なる川かよさん、稲木友哉さん。

 マイペースとは誠実ということでもあると感じさせられました。ゆうともさん、水琴鞘さん、今井雅省さん、千の牡丹さん、バルーン月紬さん、NFT Connect Worldさん、だいきちさん。

 一回切りの制作にやりきった感が、胸のすくようで素敵でした。小学生さん、AIueOさん、そして永田広志さん。

 チャレンジをみてつくりたくなった人がいます。チャレンジに出してから開けた人がいます。皆さんの前を向いて歩いていくリズムがまた誰かの人生に伝わって、終わらない物語になっていくのだと思います。私もその一人。感謝しています!

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新居 美佐子

文化の森振興センター所長・二十一世紀館長

パフォーマンス部門の講評を申し上げます。

グランプリ D「山口和也」  これまでこの芸術祭で挑戦してきた一人芝居、歌、ダンスの集大成であり、オーソドックスだが強弱のある構成が、観客を物語の世界にスムーズに引き込んだ。独学で取り組んできた努力が、自分にしか出せない味わいのある表現力につながり、独特の世界観を生み出した。チャレンジとくしま芸術祭のファイナルにふさわしいパフォーマンスだった。

準グランプリ I「Shota」  身体全体を上手く使ったジャグリングであり、音楽とのあわせ方もダンスのように絶妙で、格好良さを感じた。観客にアピールするポイントを押さえて、会場を沸かせるエンターテイメント性もあり、センスの良さを感じる。これからも、さらに技術の向上や表現力の追求につとめ、大きな花を咲かすことを期待したい。

チャレンジ奨励賞 B「劇団まんまる」  タイトルの「いま。」にふさわしく、世の中で現在進行中の重大な事柄を取り上げた。この後どうなり、私たちはどうすればよいのかと、観客の気持ちを揺さぶり、リアルな感情を呼び起こした。絶妙なキャラクター設定やさりげない笑いの要素も光っていた。扱いの難しい時事ネタに短期間でチャレンジし、脚本も演技も上手くまとめあげた力量を評価する。

チャレンジ奨励賞 O「枝川詩音」  構成に安定感があり、コミカルな要素も取り入れた見せ方で、観客を引き込むパフォーマンスとなっていた。自分が作り上げたい世界観を持っていることが感じられるので、それを目指して、これからも技術力や構成力を追求し、レベルアップに努めて欲しい。

MIP(モーストインプイレッシブ賞) R「伊井ひとみ」  独学であり、未熟なところもあるが、自分の表現したいことに真正面からぶつかっていくパワーを感じさせた。このチャレンジによって、自分を変えたいという強い気持ちが伝わった。年齢も経験も不問で、やりたい気持ちがあれば参加出来るという、この芸術祭ならではの挑戦者である。今回の受賞をきっかけにどのように成長していくのか楽しみにしたい。

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森 惠子

公益財団法人 阿波人形浄瑠璃振興会会長

 チャレンジとくしま芸術祭2024 ザ・ファイナル パフォーマンス部門に参加された皆さん、お疲れ様でした。今年も楽しみながら拝見しました。
受賞された皆様おめでとうございます。
 今回がファイナルということで、皆様の力のこもった素晴らしいパフォーマンスを拝見させていただきました。
 それぞれの方々が工夫を凝らしチャレンジしていることに感動しました。その中でも特に受賞された方々は、チャレンジ精神にあふれたパフォーマンスを発表されたように感じております。
 15回の開催でファイナルとなってしまいましたが、また、このような機会がありましたら、皆様の新たなチャレンジを拝見したいと思います

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カタタチサト

ダンサー・演出家

出演者の皆様、おつかれさまでした!!受賞された皆さん、おめでとうございます!受賞者の皆さんへは、「審査理由」の中に意見を織り込ませていただきましたので割愛させていただいて、今回は全体の感想を送りたいと思います。

今回はこのスタイルでの最終回ということもあり、みなさん力を込めた作品が多かったように思います。

どうしても、これが好きなんだ。どうしても、これがやってみたいんだ。どうしても、これを突き詰めたいんだ。と、一組一組から滲み出る表現欲が良い意味で濃ゆく現れていました。そして、ぎりぎりまで練られたであろう構成・演出や重ねた練習を感じる演目が多く、今日この場でしか見ることのできない生のライブパフォーマンスの醍醐味や切実さ、フレッシュさを味わうこともできました。

受賞された皆様は、すぐにステージでの演目になり、またひとつ階段を登っていかれるのだと思います。どうかこれからも、ご自身のパフォーマンスを信じ、疑い、切磋琢磨し、観客の皆様にお届けしてほしいと思います。

そして、どの参加者の方も、エントリーされて抽選落ちしてしまった方も、自分なりの思いをパフォーミングアーツとして作り上げ観客の皆さんに今お届けするのだ!と強い気持ちで今後も創作~上演を続けていただきたいと思います。

地方に住みながらもパフォーマンスの質を上げていくことに、私も僭越ながら協力していきたいと思っています。ここでのご縁を貪欲に活かし、もし私からアドバイスが必要と思ってくださる方はドシドシご連絡くださいね。

何はともあれ私たちパフォーマーは、見てもらえる機会、見てくれる観客あっての成長があります。演劇や音楽ホールへなかなか美術ファンの方が足を運ばれるチャンスは少ない中、このチャレンジとくしま芸術祭では、そういった方にもパフォーマンスを見てもらえる絶好のチャンスでした。私たちパフォーマーもまた美術作品にふれ、美術館の学芸員の方の支えをかりながら成長し、パフォーマンスにさらに深みや色気を入れていけたのだと思います。長きにわたり開催、支えてくださった徳島県立近代美術館・徳島県立二十一世紀館の皆様、観客の皆様ありがとうございました。

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橋本 真味

徳島新聞社事業局 事業部

チャレンジとくしま芸術祭 パフォーマンス部門の舞台に立たれた皆さま、ご発表ありがとうございました。初出場の方も何度目かの方も、それぞれ晴れやかな表情だったのがとても印象的でした。「ザ・ファイナル」ということから、この芸術祭という特別な舞台に対する、皆さまの思いが感じられる1日でした。
甚だ簡単な内容で恐縮ですが、お一組ずつ感想を述べさせていただきます。

柱淳々さん
トップバッター、お疲れさまでした!お客さんに合わせてネタを変えるのはさすが。短いお話の間のぼやき風の語りが、どんどん観客の心をつかみ、淳々さんの世界に引き込んで笑いが増えていく感覚で聴かせていただきました。

劇団まんまるの皆さん 
どこかの家庭で身近にありそうな母と子のやりとり、そして震災が起こるという設定に引き込まれました。戦争も震災も、遠いところの出来事ではなく日常の延長に存在すること、登場人物のそれぞれに異なる考えや正義。限られた時間の中で深く考えさせられる、いろんな感情がかき立てられる舞台でした。

四国大学書道部の皆さん 
作品から力強さと優しさを感じ、勇気をいただきました。紙の色使いも工夫されていて素敵でした。自分を愛することの大切さ、明るい未来を信じて前に進もうという芯の強さ、皆さんのまっすぐな思いがあらわれていました。

山口和也さん
見ているとどんどん“山口ワールド”に引き込まれる舞台でした。演芸場最後の日という設定は、チャレンジとくしま芸術祭がファイナルであることと重なり、これまでに拝見した山口さんの表現が走馬灯のように思い起こされました。お人柄がにじんだ演技、そして挑戦を続けてこられた姿勢に拍手を送ります!

たけと愉快な仲間たちの皆さん
2021年以来、大人数での演奏でした。演奏する人と聴く人でつくる生演奏の素晴らしさ、迫力を体感しました。1曲1曲に込められた思いを伝える工夫も素敵で、みんなと一緒に楽しみたいという気持ちを感じました。HAPPYが伝染した楽しいひとときでした。

yayoとemiちゃんと。の皆さん
毎回ご自身と向き合ってつくられるyayoさんらしい表現と、emiさんとのかけ合いから、曲に込められた「前を向いて」というメッセージや世界観が次第に浮かび上がってくるようでした。さらに広い舞台で拝見すると、もっと自由な感じや広がりが生まれるのかもしれません。

melonさん
絵本講談、長い演目でしたが初挑戦とは思えない声の響きと多彩な演じ分けで、絵本の世界に引き込まれていきました。大人も子どもも楽しめる、作品のチョイスも素晴らしい。他の作品も拝見したいと思いました。

Aiストリングバンドの皆さん
自然の風景が目に浮かぶような心地良い演奏でした。音楽の背景や楽器の解説はとても分かりやすかったです。異国の曲でありながら、どこか懐かしく親しみやすい雰囲気なのは、日本語の歌詞と優しい歌声・演奏のせいでしょうか。

Shotaさん
軽快な音楽に乗せて次々と技を繰り出す堂々としたステージ、成功する度にたくさんの拍手がおくられました。魅せるのがお上手で審査員を含め、観客の皆さんはくぎ付けだったと思います。「最高のパフォーマンス」でした!

神聖舞踏 玲鳳&ブルーロータスの皆さん
全体を包む独特な雰囲気に引き込まれつつ、かわいらしくも堂々としたブルーロータスさんの舞に見とれました。別れの場面、大切な人の大切な思い出と一緒に前を向いて生きていく、悲しくも素敵なステージでした。

YAMATOさん
音楽にぴったり合ったキレの鋭い動き。対する相手が見えるような勇ましさと、愛を唄う曲とのマッチングは、なんとも映画のワンシーンのように見えました。

おが姫。さん
誰もが感じたことのある思春期の自分自身や周囲へのもやもやした気持ちが思い出されるパフォーマンスでした。披露していただいた3曲を通して、ご自身の10代と真摯に向き合われたというおが姫。さん。「前に進みます」という言葉に、すがすがしさを感じました。

さくらさん
ステージいっぱいに、キレのあるダンスを魅せてくださいました。凛とした姿、かっこよかったです。終わった後のにこやかな表情に、ダンスが好きという気持ちがあふれているようでした。

枝川詩音さん
目標とする方に近づこうというテーマだったとのこと、お話しを聞くまでは、ご本人の雰囲気にピッタリ!と思って拝見しました。どこか優雅で上品な、そしてドキドキハラハラするサーカスパフォーマンスの素敵なステージでした。観客を上手に引き込む魅力を感じました。

ZoneRayの皆さん
好きなことこそやる。短いメッセージに込められた率直な思いをパフォーマンスからも受け取りました。一発の本番合わせとは思えない身体表現とのコラボ。耳も、目も、奪われる感覚で見ておりました。

Mashikutoの皆さん
それぞれが奏でる音と声と舞と、個性が融合して作り上げられた、皆さんにしかできない世界に誘い込まれるように楽しませていただきました。祭りの華やかさや高揚感と、終わった後の切なさを感じるステージでした。

伊井ひとみさん
まとっていたベールを引き裂く手の動き、鬼気迫る表情から、表現したいという強い思いを感じました。「自分らしくできた」という言葉が、すべてを物語っていたと思います。どんな人も自由に表現できるということを体現した素晴らしいチャレンジでした!

以上でございます。
毎回、皆さまの舞台を通して大切な気付きをいただいてきました。
自分を自由に表現すること、誰でも何歳からでも挑戦できること、そして目標に向かうその姿は輝いていること―。そして今回は、この芸術祭に対する感謝の気持ちを強く感じました。たくさんの方に愛された芸術祭に関わらせていただけたこと、心からお礼を申し上げたいと存じます。改めまして、出場者の皆さま、今日のためにご準備いただいた運営ご担当の皆さま、これまで芸術祭に関わってこられたすべての方に、感謝申し上げます。またどこかでお目にかかれますように! 

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丸山 貴成

スタジオソル代表

チャレンジとくしま芸術祭2024ザ・ファイナルにご出演のアーティストの皆様、会場で応援してくださったお客様、開催に携わった全ての関係者の方々、本当にありがとうございました。

今年もパフォーマンス部門の審査員として参加させて頂き、2010年からはじまったこの素晴らしい事業のラストシーン、15年の歴史の幕引きに立ち会うことが出来て光栄であり、また感慨深いです。私は審査員として携わるずっと前から、一観覧者として、チャレンジとくしま芸術祭の展示作品や、ステージで表現されているアーティストの皆様の姿を観てきました。同じ徳島で暮らす方々の目映いパフォーマンスに、毎度ココロを打たれてきたのです。

末筆ではございますが、今回受賞された皆様、本当におめでとうございます。そして、これまで参加された全ての表現者、関係者の方々に感謝致します。チャレンジとくしま芸術祭はこれで閉幕ですが、今後、カタチを変えて「未来へ羽ばたく徳島発のアーティスト」を応援する事業が生まれることを期待し、またその一助となれるよう自身も精進していきたいと思います。

なお、以下に「チャレンジとくしま芸術祭2024ザ・ファイナル」パフォーマンス部門でのステージを受けて、私の個人的な感想を少しですが、添えさせていただきます。

柱淳々さん
出番が最初で難しいと思ったが、落語を集約した短い小噺を重ねて、会場を自分の空気に染めていた。落語を知らない人にも受け入れられやすい工夫だと感じた。

劇団まんまるさん 
演劇としては短い時間の中で、現代社会に起こっている問題を独特の表現で提起。限られた空間を効果的に活用して物語の世界を創造し、それを観客と共有していた。難しいテーマにチャレンジしていたが、脚本の巧みな構成と演者の誠実な表現で見事に描きだし、観る者に問いかけた。

四国大学書道部さん 
オーソドックスなスタイルのパフォーマンスだが、現在の社会情勢を鑑みて、自分たちの想いを力強い文字で真摯に表現していた。演者のお二人も個性があり、魅力的だった。

山口和也さん
最後となる「チャレンジとくしま芸術祭」と、披露した演目の設定(演芸場が閉館)を重ねていて、山口さんの今回の表現にかける思いが伝わってきた。冒頭から自然体で演技へ移行しており好印象。演出も奇をてらうわけでもなく、すんなりと観ることが出来た。ダンス表現も独創的で、情熱と寂しさが入り混じっているように感じた。エンディングもシンプルで、ほっこりした。

たけと愉快な仲間たちさん
流石、グランプリ受賞者という圧巻のパフォーマンス。ビッグバンドの重厚なサウンドと、福富弥生さんの爽やかで軽快なボーカルがとてもマッチして、会場の観客の心を掴んでいた。かっこ良くて楽しいステージだった。

yayoとemiちゃんと。さん
これまでのyayoさんのスタイルを貫いてらっしゃったなと感じた。情熱的な表現かつ、楽しんでらっしゃる様子も伝わってきた。今回初の2人での演技ということで、限られたスペースをフルに活用していたと思う。

melonさん
絵本を講談で表現するという試みは面白いと感じた。描かれているイラストを、話し手の表情や感情で再現していて、絵本とはまた違う印象になり、興味深い。演じ分けは上手くいっていた。演出としてBGMは分かりやすく効果的だが、話し方で山場を盛り上げる工夫も必要と感じた。

Aiストリングバンドさん
軽快なリズムと音で、聴いているうちにウキウキした気持ちになる。また、2曲目は心が落ち着くメロディーと歌で引き込まれた。打楽器を使った演奏も面白かった。

Shotaさん
会場を一気に巻き込んで、お客さんと一体となっていた。チャレンジする気持ちが顕著で、演出にもオリジナリティがあり、見せ方・楽しませ方にセンスを感じた。今後も大会などに挑戦していくということで、たくさんの人を楽しませてほしい。

神聖舞踏 玲鳳&ブルーロータスさん
演目の構成が、ほぼお子さんを中心に進んでいくところに驚いた。ツルと子供の関係性やストーリー展開が観るものを惹きつけ、言葉はないが最後まで物語に引き込まれた。一つ一つの動きが丁寧で、素晴らしかった。

YAMATOさん
空手の型としても、エンターテイメントとしても、しっかり演じられていた。音楽とどのように融合するかと思ったが、個人的には「選曲」と「空手の力強さ」とのギャップが良かった。

おが姫。さん
自分の好きな表現をやり切るんだという強い意志を感じた。道具等の仕込みも工夫され、ダンス→朗読→歌→演技からのダンスと、観客を意識して構成もしっかり考えられていた。おが姫。さん自身が、ミュージックビデオの主人公として生きているように錯覚した。

さくらさん
とても上手だった。曲の楽しい雰囲気が、からだ全体で表現されていた。メリハリもあり一曲分の時間があっという間だった。同時に、もう少し観たいなという気持ちになった。

枝川詩音さん
手に汗握るパフォーマンスで、会場全体が固唾を飲んで見守るシーンも度々。「難度の高い技」にチャレンジをされているなと思った。その精神が素晴らしい。とても楽しいステージだった。

Zone Rayさん
パフォーマンス全体を通して観る人、聴く人の感性に委ねるスタンス。空間、音楽、物体?が織り成す実験的な世界観は、受け手・感じる側の解釈で面白くもなり、無にもなる。自分たちの表現にこだわり続けており、個人的に毎年楽しみにしていた。今後も独自の表現を追求していって欲しい。

Mashikutoさん
各々が身近な楽器を持ち寄って、楽しい音楽会が始まる。そんな雰囲気を感じさせてくれる演奏だった。音楽の持つ可能性をシンプルに伝えてくれている。コーラスと鈴の音が心地良かった。

伊井ひとみさん
静と動のコントラストが際立ち、登場から去り際まで素晴らしい集中力で迫力のある表現だった。表情も豊かで観ていて飽きない。自身がイメージしたものを、シンプルに体で表現していたように思う。最後まで、息をするのを忘れるくらい引き込まれた。

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