2018年7月14日(土)- 9月2日(日)

ごあいさつ


絵本作家・佐野洋子(1938~2010年)は、ファンタジーの中に人間への鋭い洞察を込めた深みのある作品で、絵本の世界に独自の存在感を放ちました。中でも『100万回生きたねこ』は。40年以上読み継がれているロングセラーです。また、エッセイストとしても人気を集め、多岐にわたって活躍しました。本展では代表的な絵本の原画や版画作品などを通して佐野洋子のユニークで豊かな世界を紹介します。


内 容
第1章 「『100万回生きたねこ』の世界」
いろいろな飼い主のもとで何度も生まれ変わる死なないねこが、やがて愛を知り、命を知る名作絵本。そのオリジナル原画全点(特別出品)と、デジタルリマスター版を展示。またミュージカル「100万回生きたねこ」(2013/2015年)の衣装や小道具なども紹介。


『100万回生きたねこ』佐野洋子 作・絵 講談社 1977年
17ページ原画 カラー写真修正液・紙 ©JIROCHO, Inc. / KODANSHA




第2章 「ねこ、ねこ、ねこ」
ねこが登場する絵本のなかから、女の子とねこが主人公の『すーちゃんとねこ』(初公開)、友達探しのねこのおはなし『さかな1ぴき なまのまま』、お人よしなライオンと身勝手な猫たちを描いた『空とぶライオン』の3作品の原画を紹介。


『空とぶライオン』佐野洋子 作・絵 講談社 1982年・1993年(新装版)
13ページ原画 アクリル・紙 ©JIROCHO, Inc.




第3章 「永遠のこども」
幼い頃の記憶に基づく『わたしのぼうし』の原画と、第二次世界大戦後の子ども時代を綴った小説『右の心臓』の原稿を紹介。


『わたしのぼうし』佐野洋子 作・絵 ポプラ社 1976年
表紙原画 パステル、水彩・紙 ©JIROCHO, Inc.




第4章  「自然への眼差し」
佐野は、東京以外に山梨、静岡、北軽井沢にも住んだ。自然や生き物への温かい眼差しを感じる『ふじさんとおひさま』(詩・谷川俊太郎)、『ちょっと まって』(作・岸田今日子)、最後の自作絵本『ねえ とうさん』の3作品の原画を紹介。


『ねえ とうさん』佐野洋子 作・絵 小学館 2001年
30-31ページ原画 パステル・紙 ©JIROCHO, Inc.




第5章 「銅版画との出会い」
 1990年代から取り組んだ銅版画の仕事を、自伝的な内容となる『女の一生 I』、『女の一生 II』、そして一種の哲学的な人生観をみせる『あっちの女 こっちの猫』の、いずれも一般向けの画文集3作品で紹介。


『女の一生 Ⅰ』佐野洋子 文・絵 トムズボックス 1992年
41ページ原画 エッチング・紙 ©JIROCHO, Inc.



出品点数:絵本原画、銅版画作品、愛用品などあわせて約130点。


オフィス・ジロチョーからのメッセージ

佐野洋子は職業を訊かれた時にはずっと「絵本作家」と名乗っていました。
のちにエッセイなども発表していますが、絵本には特別な思いがあったようです。

生前、佐野洋子が絵本は本の形になって初めて完成するものだと話していたことがあります。絵本とは、物語を作り、となりに絵を置いただけのものではありません。デザイン、印刷、製本、様々な工程を経て、一冊の本になります。そして読者が手にするときに、初めてお見せできるクオリティに達すると言いたかったのだと思います。

今回の展示でも見られるように、佐野洋子は絵本の制作において同じ画材、技法などはほとんど用いていません。そのとき新しい画材があれば試し、あるいは今まで使ってきたものを組み合せ、様々な技術を取り入れ、何度も試行錯誤を繰り返しています。そして元々真っ白な束見本は何度も書き直した物語とラフ画で汚れています。これらは佐野洋子にとって、絵本を作るということが何よりも大切なものだったという証拠ではないでしょうか。
機会があれば絵本を手にとって眺めてみてください。
絵と物語、本の大きさ、文字の大きさ、画面構成、ページをめくること、視線の動き、そしてもちろん子供が楽しめるものか、他にも様々な要素が詰まっています。
佐野洋子はその全てを表現する職業「絵本作家」を名乗ることに自信と喜びがあったのでしょう。

本展ではおもに佐野洋子の “本業”がご覧いただけます。
本人が存命ならば、一冊の本ではない未完成のものを皆さんに見ていただくことは出来なかったかもしれません。しかし、今だからこそ感じることができる佐野洋子による絵本の創作過程をゆっくりと楽しんでいただければ私たちは幸せです。






お問い合わせ


100万回生きたねこ-佐野洋子の世界展 実行委員会事務局
(徳島新聞社事業部内)TEL: 088-655-7331

徳島県立近代美術館
〒770-8070 徳島市八万町向寺山
TEL: 088-668-1088 FAX: 088-668-7198
E-MAIL: art@mt.tokushima-ec.ed.jp


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