チャレンジとくしま2014TOP
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安達 一樹
安達 一樹
徳島県立近代美術館上席学芸員
Kazuki Adachi
 皆さんこんにちは、安達です。受賞の皆さんおめでとうございます。発言の順番の関係で他の委員の方が「いいこと」をだいたい言ってしまうので、私のところでいうと毎年ちょっとこう、辛口のことをいうのが恒例になっておりまして、今回も、ちょっと残念に思ったことを中心に話したいと思います。

 今回、全体的な印象として、作品は良かったと思います。ただ、この美術館ですね、5mという壁の高さ、それから5mという幅、それを十分に生かし切れているかどうかという点で、私はちょっと「どうかな?」と思ったところがありました。

 小さい物が比較的多くて、それを沢山集めたり配置したりして、5mを使っていたという感じを受けました。これまでには非常に大きな作品、ドーンとくるような作品もあったので、今年はそれが見られなかったのが残念に思いました。かといって大きいだけが良いわけではないのですが。

 大きくされた方もいるのですが、この5mという非日常ですね。5mの高さっていうのを普通考えて、自分の家とかでも考えて5mという高さってあまり想像がつかないですね。今日話をしようと思って、5mの高さってどのくらいかというのを、ネットで見てみたら、だいたいキリンの高さが5.5mとあった。キリンの頭の上ですね。これって日常にないよなーって思って。それで、幅はというと、救急車の全長とあって、これも全然日常じゃないなと。要するに、日常にない大きさの空間をどう使ってもらえるかというのを期待したいのです。

 話を戻して、小さい物を集めたといいながら、受賞された方の作品は、こう、念が込もっているっていうのですかね、迫力というか、力というか、そういうものが込められているところがあった。特にそういうのが強い作品が、賞に結びついたと思います。

 それから、素材を活かしたということが挙げられるのですが、これは諸刃の剣で、素材を巧く使って使いこなせば素材の力が出てくるのですが、下手すると素材の力が作品の魅力になってしまう可能性があるので、その辺は気をつけないといけない。

 あと、吊し飾り(※和布遊び仲間どなりさんの作品)ですね。これをどう評価するかっていうのは色々な意見がありました。その他の方々の受賞作もですが、(講評では審査員の)皆さん「よかったよかった」としか言いませんけども、審査の時は、それぞれの方が色々と意見を言って、大変だったんですね。そして、一長一短ではありますが、長の多い人の方から賞になった。吊し飾りは、その点、一針一針気持ちを込めて皆さんが作って、それを活かしているところを長としてみるということです。

 この作品は立って見たときは、あまりパッとしなかったのですが、前にあったイスにすわってしばらくながめてみると、非常にほのぼのと温かい感じがした。作っている方の気持ちが伝わってきたというところを私は評価しました。その気持ちが「伝わる」というのも、念の強さのひとつだと思います。

 賞に漏れた方々ですが、審査の段階ではいくつもの作品が候補にあがって、「どうだろうか」と。最終的に審査員全員が会場まで来てもう1回見直して、それで賞を決めています。それくらい伯仲していたということですので、自分はダメだったんだと絶対に思わないでください。皆さんそれぞれに良い作品作っています。

 でも、一歩ですね、一歩何かが足りなかった。その足りなかったところを、自分でどこが足りなかったのかな、と考えてもらえればと思います。例えば「チャレンジしている」っていうところで、自分はチャレンジしたつもりになってそこで満足してしまうと、そのチャレンジが伝わらないということもあります。そのあたりのことをもう一回、本当にやりきっているかどうか、やりきれているかどうか、そして、やったことが人に伝わっているかどうかというのを考えることで作品というのは向上していくと思います。

 賞を逃した方も、そんなに差はないのですから、皆さんがんばって次へ続けていっていただけると嬉しいです。ちょっときついことばっかりいいましたけれど、本当に審査していて楽しかったです。みなさん、ありがとうございました。