チャレンジとくしま2014TOP
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河原崎貴光
河原崎貴光
徳島大学准教授
Takamitsu Kawarasaki
 今回2回目の審査をさせてもらったのですが、昨年同様、楽しく審査させていただきました。

 全体の展示を改めて見直して、先ほども何周もして見ていたんですけども、誰かに何かを伝えるために表現された、というものと、自分の楽しみのために何かを作る、といったものが共存しているというのがこのチャレンジとくしま芸術祭の特徴かなということを感じました。

 そういった意味で、MIP賞に選ばれた和布遊び仲間どなりさんの吊し雛は、自分達の楽しみの為に何かを作るというとても根源的な欲求というか、楽しみ方というものが密度を持って提示されているなと思いました。これがアートの公募ということであれば、選外になった可能性が高いと僕は思うんですけれども、作る喜びと物としての魅力という、当たり前のものが現在のアート業界では希薄となりつつあると思います。そんな中で、当たり前のことが認められるということはとても大切なことだなと思います。

 そして、伊丹 直子さんのかまぼこ板に描いた絵画なんですけども、日常のいとおしきものたちというものを描く喜びと、物としての魅力というものが、高い完成度で提示されていたと思います。見る人にとっては、かまぼこ板を使っているということはそれほど重要でないと思いますが、連続した同じサイズの板が映像の1コマのようなつらなりを持って、作者の目線が感じとれて、僕個人としては一番好きな作品でした。

また、先ほどもお話があったんですけども、カモナ・アートクラブ・ボーイズカルテットさん。トラックの描写が僕はすごく好きで、普通はこうなんだ、とかアートはこうなんだ、ということには流されないで、好きなものを格好よく描くという姿勢をこれからもずっと続けて欲しいなと思います。

 あと、Mix Galaxiaさんのキャストドールは、表現ジャンルや工芸品としての歴史だとか認知度、という意味ではまだメジャーではないといえるかもしれないですけども、ドルフィーだとかいわれるような、製品化された球体関節人形以降の世代観というか、あたらしい世代の人間の表現だなということを感じました。紙とか焼き物、樹脂だとか、人形は様々な素材で作られ続けてきたんですけども、キャストで型どりをして量産されたヒット商品というのがあるんですが、それをさらに、その世界観をまたキャスト取りしたような、人間と人間の模造品をまたもう一回模造するというような、きわめて現代的な表現手法の可能性を感じました。

 あと、原田史郎さんのビニールの藍染めというものも、手法としての可能性を感じました。藍染め・染色というような工芸の手法で、ビニールのようにチープなイメージのある素材を使って、レイヤーというか、奥行きのようなものを体感させるという試みに可能性を感じました。僕は、ジーパンだったりとかビニール傘にも愛着を持ちますので、そういった表現の可能性というのは十分にあり得ると思います。

 先に申し上げたように、この公募はアートに限った公募展ではないので、何でもアリで、アンデパンダン展のようなものよりも意味が広い、もっと意味が広いのではないかと思うんですけれども、例えば商業的なプロモーションであったりとか、どこかで見た物をまねるというだけでは本来の作る楽しみ方というのは伝わらないのだと思いますので、作ることを楽しむという、その作り方というかその楽しみ方自体というのをチャレンジという意味で、これからも皆さんどんどんものづくりというのを楽しんでいっていただきたいと思います。以上です。